/理想的には、物語の世界から書き言葉を増やしていく、つまり語彙(その人が持つ言葉の総量)を増やして行くのが最も効率的で近道なのですが、昨近、「受験までにもう一年もない」、「残すところ半年しかないが、なんとかならないか」、「小手先でも良いので速成で特訓して欲しい」等々のご依頼が少なくありません。
有名塾では、
・まず何について書かれた文章なのかを掴め
・一気に読み進むのではなく、段落ごとに「中心文」を探せ
・段落と段落の繋がりを確認せよ
・不正解の5パターンを記憶せよ、それ以外が正解
・結論の一文を特定せよ
と、まあ、それらしい「コツ」を列挙して、実際の問題文でその「コツ」の使い方を教えています。
これらは、確かに説明文を理解するときのポイントと言えなくもないですが、語彙が足りていない人にとっては、活かしようのないガラクタにしか過ぎません。
何年も塾に通い、毎週のようにテストを受け、おびただしい説明文を読んでいる筈なのに、いっこうに読解力が付いてこないのは何故でしょうか。
理解できる書き言葉が増えて行かないのに、説明文の難易度はどんどん上がり、入試レベルの問題は、ほとんど大人向けと言って良いレベルの本から出題されています。
例えば、
加藤秀俊 「暮らしの思想」
畑正憲 「ムツゴロウの動物交際術」
清水清「食虫植物のひみつ」
山田太一「映像を見る目」
河津千代 「知っていますか 日本の自然と木の文化」
森山卓郎「コミュニケーションの日本語」
石川英輔「江戸のゆったりスローライフ」
福岡伸一「生物と無生物のあいだ」
これらは手近にあったテスト問題のうち出典が記載されているものを適当に列挙したものです。
「思想」、「交際術」、「食虫植物」、「映像」、「文化」、「コミュニケーション」、「スローライフ」、「無生物」などなど、既に本の表題の中に普通の小学生がカバーしているとは思えない語彙が含まれています。
内容は確かに中学生辺りを意識して丁寧で易しい記述を心掛けているようであり、一部の難解な言葉にはカッコ書きで意味が説明されていたりもしますが、「抽象的な言葉」の理解を要求するという点では、全く妥協していない文章がほとんどです。
逆に、「抽象的」な事を扱っていることが、入試問題として扱うときの条件になっているとさえ言う事が出来ます。

/話しは、「話し言葉」、「書き言葉」、「抽象的な言葉」という風に発展してきました。
(つづく)