「抽象的な言葉の意味」をものにするにはどのような方法があるでしょうか。
その答えは「短文を作る事」です。
物語文の中で使われる「抽象的な言葉」は、「想像の世界」で輝くことで強い意味を放ち、たとえ意味が完全には分からない場合でさえ、記憶に刻まれやすいと言えます。
説明(論説)文で、物語文での「想像の世界」と同じ働きをするもの、それが「短文を作る事」と言っても良いでしょう。
例えば、「希望」を例に考えてみましょう。
小学校3年生の男の子に、「希望という言葉を使って文章を考えてごらん」と言ったことがありました。彼は、「希望って、願いとか夢ってことだよね。ウチの夢はアニメを作ることかな」と答えました。私は、それを受けて「〇〇君の希望は将来、アニメを作る事なんだ」と言ってから、「僕の希望はアニメを作ることです」とノートに書いてもらいました。
これで、希望という言葉の意味を個人の物語の中にはめ込むことが出来ました。たったこれだけのことで、小3の子の胸に「希望」という言葉の意味が刻まれたのです。
もうひとつ例を挙げましょう。算数がずば抜けて出来る小学校5年生の女の子とのやり取りです。説明文で「思想」につまずいた時のことでした。
私:「〇〇さん、君にとって大切な生き方って言うと何かあるかな?」
〇〇さん:「大切な生き方?お母さんが『失敗しても良いからあきらめずに頑張りなさい』って言ってたよ」
私:「あ、それって思想だよ」
「私の思想は、失敗しても良いので諦めずに頑張る事です」と書いてもらいました。
共感:「弟は何か欲しいとすぐ泣くけど、私はちっとも共感できない」
文化:「国によって言葉や習慣や考え方が違うということは、文化が違うということだ」
存在:「この世界に僕が存在しているって当たり前のことではない」
取って返す:「校門が見えた時に忘れ物をしたことに気が付いたので取って返した」
声をつまらせる:「「あんまり悲しくて辛い話だったので、質問されても私は声をつまらせるばかりだった」
上にいくつかの短文を挙げましたが、いつもこう上手くいくとは限りません。どんな質問をするかが大きな鍵ですが、意味が分かっていればほとんどの子が存外にうまい短文を作ることが出来ると言うのが私の実感です。
注意が必要なのは、説明(論説)文の読解に取り組んだその時に短文作りまで行かないと効果が半減してしまうことでしょう。

次回は、特訓の流れをかいつまんでご説明いたします。
つづく